今回は、事業承継計画の作成について考えてみたいと思います。

事業承継計画の進め方

事業承継は単なる株式承継ではなく事業自体の承継です。
事業承継に際しては、先に拾い出した「事業承継上の課題」、すなわち検討事項を「事業承継計画」に落とし込み、解決・対応方針を明確にし、計画的に進めると管理しやすくなります。

事業承継計画作成のポイント

事業承継計画作成のポイントは、以下のとおりです。

①経営者、後継者の関与

経営者、後継者の主体的な関与無くして事業承継はうまくいきません。会計事務所やコンサルタントが経営計画や承継計画を形式的に作文する例が見受けます。しかしながら、作文による承継計画は意味が無いばかりか、阻害要因と言えます。会計事務所の役割は、参謀役としてしっかりとクライアントの課題を認識し、対応方針の作成をサポートしてあげることと思います。

②工程表の作成

承継計画の作成に関して工程表(スケジューリング)があると進捗管理に役立ちます。また、各項目の工数を予定することで会計事務所やコンサルタントにおける「見積明細書」にもなります。全体の工程期間としては、通常数年間になります。

③定期的なミーティング機会

月に1回は定期的に、経営者・後継者とディスカッションの機会を持ち、進捗状況を共有しましょう。また、計画の変更がある場合は早めに軌道修正します。

④関係者の協力

後継者問題は親族間でも関心事であり、法定相続人にとって株式は主要な相続財産のため強い関心があります。事業の遂行には法定相続人をはじめとした親族の協力が不可欠であり、早めの家族会議や親族会議による対話が必要です。

⑤中期目標の設定

対象会社の経営成績や財政状態等について、5年後、10年後の具体的な中期目標を設定しましょう。
売上高、営業利益、純資産、借入金、従業員数など目標とする数値をKPI(key performance indicator)として設定しましょう。
(注)KPIとは、目標とする指標のことをいいます。

事業承継計画の記入方法

事業承継計画のフォームを文末に示しましたが、その記入方法は以下のとおりです。


(1)期間

表左が現在で、目標年度を数年後(例えば5年後)に設定します。全体としては10年間くらい先までの予定を設定します。

(2)会社

売上高~借入金残高について、マイルストーン(*年後)ごとの数値目標を設定します。組織全体の目標設定も大事ですが、部署やチームごとに目標設定すると、各人の自己管理・意識変化を促すことになるため有用です。
また、資本政策に関するイベント、株価と株式数、主要株主の株数の推移計画等を記入します。役員の異動計画についても記入します。

(3)現経営者

 現経営者の基本情報や事業承継対策イベント、所有株式の推移計画等を記入します。株式以外の財産の所有状況を把握することで、相続税の予定額、納税資金の有無、遺留分対応の可否が把握できます。

(4)後継予定者

 後継予定者の基本情報、段階的な教育方法、役職のステップアップ計画、所有株式数等の計画を記入します。

(5)主な課題

 先に拾い出した課題を記入し、いつまでに解決するかそれぞれの達成時期を示します。

 (参考)中小企業基盤整備機構 事業計画をアレンジ