今回は所得税、資産税等の改正内容に関して、ご説明いたします。
<所得税>
1 NISA
家計の資産を「貯蓄から投資へ」と積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、
NISAの抜本的拡充・恒久化を行う。
具体的に、下記3点を柱とする。
・非課税保有期間を無期限化
・口座非課税保有期間については期限を設けず、NISA制度を恒久化
・年間投資上限額を拡充
年間投資上限額の拡充について、下記の2枠が併用可能となる。
「注1 つみたて投資枠」(一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の枠)
「注2 成長投資枠」(上場会社への投資が可能な現行の一般NISA)
注1 現行のつみたてNISAの水準の3倍まで拡充(年間40万円→120万)
注2 現行の一般NISAの水準の2倍まで拡充(年間120万円→240万円)
以上により、年間投資上限額の合計は360万円となり、英国ISA(約335万円)を
上回る規模が実現する。
なお、生涯非課税限度総額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)となる。
【適用時期】令和6年以後から適用する。
2 スタートアップ再投資の非課税措置の創設
経営者の大胆な挑戦を可能とし、働き手に新たな活躍の場を提供する新たな産業の創出・育成を
推進するため、スタートアップの設立・育成を支援するための制度や環境など、
スタートアップを取り巻く支援環境全般を抜本的に強化する。
わが国のスタートアップの成長を促していくために、「創業」、「事業展開」、「出口」の
各段階を通じたインセンティブの充実を図る。
<創業>
以下の場合において、再投資分につき株式譲渡益を非課税とする制度を創設
上限額は20億円(米国のQSBSに係る株式譲渡益の非課税措置の規模約13.5億円を上回る)
・保有株式の譲渡益を元手に創業者が創業した場合
・エンジェル投資家が創業初期(プレシード・シード期)のスタートアップに再投資を行った場合
【適用時期】令和5年4月1日以後の再投資から適用する。
<事業展開>
ストックオプション税制の権利期限の上限を、一定のスタートアップ企業について
10年から15年へと延長する等の措置を講ずる。
<出口>
オープンイノベーション促進税制
3 超高所得層の税負担
公平で中立的な税制の実現に向け、個人所得課税において、極めて高い水準の所得について
最低限の負担を求める措置を導入する。
株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、
その他の各種所得を合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除額(3.3億円)
を控除した金額に、22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超過した場合に、
その超過した差額を追加的に申告納税することとする。
<計算式>
①所得税額
②(基準所得金額―特別控除額3.3億円)×22.5%
→②が①を上回る場合の差額を申告納税する。
【適用時期】令和7年分以後の所得税から適用する。
<資産税>
1 生前贈与加算の加算期間の延長
現行:相続開始前3年以内に受けた贈与は相続財産に加算することとなっている
→相続財産に加算する期間を7年に延長する。
その際、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち合計100万円まで、相続財産に加算しないこととする。
【適用時期】令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
2 相続時精算課税制度の少額非課税措置等の導入
現行の贈与税:
暦年課税制度・・年間110万円まで非課税(基礎控除)
相続時精算課税制度・・特定贈与者からの贈与につき2,500万円まで非課税(相続時には足し戻し精算する)
→ただし、暦年課税のような基礎控除がないため少額でも申告が必要であり扱いずらい
⇒相続時精算課税制度の使い勝手を向上させる措置を設ける。
暦年課税と同水準の基礎控除(毎年110万円まで非課税)を創設
・年間110万円まで贈与税非課税
→範囲内なら申告不要に!
・非課税分は相続時に加算も不要
→暦年課税制度は生前贈与の加算期間内なら年110万円以下の部分(一部除く)も
相続税に加算されるが、精算課税制度は年110万円部分も加算不要で有利に!
⇒生前にまとまった財産を贈与しにくかった者にとっても、相続時精算課税を活用することで
次世代に資産を移転しやすい税制となる。
【適用時期】令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
3 教育資金一括贈与非課税制度等の延長
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置・・3年延長
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置・・2年延長
なお、契約終了時に非課税拠出額から支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、
一般税率を適用する等の見直しを行っている。
⇒次の適用期限到来時には、
利用件数や利用実態等を踏まえ、制度のあり方について改めて検討される予定である。
<納税環境整備>
1 電子帳簿等保存制度の見直し
国税関係帳簿書類の電子化を一層進めるため、事業者等における経理の電子化の
実施状況や対応可能性、適正な課税の確保の観点での必要性等を考慮しつつ、
下記の通り必要な見直しを行う。
①国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度
過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な電子帳簿について、
信頼性の高い電子帳簿への更なる移行を目指す観点より、その範囲を合理化・明確化する。
【優良な電子帳簿の範囲】
・仕訳帳
・総勘定元帳
・「必要な一定の事項が記載された帳簿」
(例:手形帳、売掛帳、買掛帳、有価証券受払い簿、固定資産台帳、
繰延資産台帳、売上帳、仕入帳)
【適用時期】令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。
②スキャナ保存制度
制度の利用促進を図る観点より、要件の緩和措置が行われる
【適用時期】令和6年1月1日以後に保存が行われる国税関係書類について適用する。
③電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度
・ システム対応が間に合わなかったことにつき相当の理由がある事業者等に
対する新たな猶予措置
・検索機能の確保の要件について緩和措置
【適用時期】令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用する。
<防衛力強化に係る財源確保のための税制措置>
1 法人税
法人税額に対し、税率4-4.5%の新たな付加税を課す。
中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除する。
2 所得税
所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。
なお、現行の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げる
とともに課税期間を延長する。
⇒以上の措置の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とする。(先送りされました)