今回は、事業承継税制の適用を受ける際の要件である「入口要件」について掘り下げてみたいと思います。

特例事業承継税制は、贈与・相続どちらでも使えますが、通常は承継計画に沿った実行が可能な生前贈与で行われるケースが多いと思われますので、今回は贈与ケースについて説明しますが相続ケースもほぼ内容は同じです。
入口要件としては、あげる人、もらう人、その対象会社の3点です。

入口要件

(1)先代経営者=贈与者としての要件

贈与者は会社の先代代表者(贈与前に退任要)で、同族グループ(親族)の中で筆頭株主(議決権ベース)であり、同族グループ合わせて議決権の過半数を有する必要があります。今般の改正によって、上記原則パターンに加えて複数の株主、例えば先代経営者の妻などが有する株式の贈与も承継税制の対象となりましたが、先代経営者からの贈与(原則パターン)後に行わないと適用できない点に注意が必要です。

(2)後継者=受贈者としての要件

事業承継により後継者となる者が、株式の贈与の時に会社の代表者であり、同族グループ(親族)の中で筆頭株主(議決権ベース)で、同族グループ合わせて議決権の過半数を有することが求められています。更に、贈与の場合には、3年以上取締役で、且つ20歳以上であることが必要です。

なお、今般の改正によって、後継者は最大3名まで認められることになった(議決権10%以上上位者がいない者)ので、実際に使うかどうかは別ですが、集団指導体制の設計も可能となりました。

(3)会社としての要件

まず、会社自身が、中小企業者で、上場会社・風俗営業を行う会社に該当しないことが必要です。中小企業者要件は業種ごとに資本金要件か従業員授業員数要件のいずれかを満たせば該当しますが、端的に言えば、どのような業種であっても資本金が5,000万円以下であれば中小企業者に該当します。 次に、資産管理会社に該当する場合は対象外です。

具体例

具体的な事例で説明しましょう。

(すべて議決権有り)


代表取締役甲が議決権の75%(筆頭株主)を所有し、甲の妻が15%を所有しているので、同族関係者(親族等)で議決権の過半数(75%+15%=90%>50%超)を有するため、甲は先代経営者要件を満たします。甲が代表取締役を退任した後に、甲と甲の妻が有する株式90%を3年以上取締役で20歳以上の後継者乙に贈与することで、乙は後継者要件を満たします。なお、先代経営者の呼称は贈与時に代表者であってはならないという意味があります。そして、対象となる会社は、中小企業基本法に定める中小企業者(資本金5,000万円以下)で資産管理会社等に該当しなければ認められます。第三者と乙の有償取引は、贈与取引でないので特例事業承継税制の対象外です。

次回は、適用対象外となる「資産管理会社」について詳しく解説したいと思います。