今回は、事業承継税制適用に際して、最も注意が必要となる「資産管理会社」について解説します。

 事業承継税制は、「資産管理会社」を対象としていないので、多くの資産家の方が利用する不動産賃貸業等は対象外のように思われています。しかし、以下のとおり、特定資産の総資産に占める割合が70%に満たない場合(原則判定)や親族外従業員が常時5名以上いる会社(例外判定)は、「資産管理会社」に該当しないので承継税制の適用対象になります。以下、原則判定と例外判定について、みてみましょう。

 「資産管理会社」には、「資産保有型会社」、「資産運用型会社」の2類型がありますが、いずれの場合も事業承継税制の対象になりません。

原則判定

(1)資産保有型会社

 「資産保有型会社」は、有価証券、自ら使用していない不動産、現預金等の特定の資産の保有割合が、貸借対照表上に計上されている帳簿価額の総額の70%以上の会社のことです。なお、配当や過大役員給与の支給により分数式の分子の額を低下させる潜脱行為を防止するため、過去5年内の同族関係者への配当額、過大役員給与がある場合には、分数式の分母分子両方に加算します。

(2)資産運用型会社

 「資産運用型会社」は、上記の特定の資産からの運用収入が、総収入金額の75%以上の会社のことです。

例外判定

 「資産管理会社」の判定には、以下の例外があります。

 すなわち、贈与の時又は相続開始の時(下記イ要件は3年以上)において、下記イ~ハのいずれにも該当する場合には、「資産管理会社」に当たらないとされています。原則判定の要件を満たさない場合でも例外判定で復活できるケースがあるわけです。

<資産管理会社の例外要件>・・贈与ケース

贈与日まで引続き3年以上にわたり、商品の販売、資産の貸付け(親族等への貸付を除く)をしていること
贈与時において、常時使用従業員数(親族外従業員)が5人以上であること
贈与時において、ロの従業員が勤務している事務所、店舗、工場等を所有し、または賃借していること

 例外要件の中でも、ロ要件の親族外従業員を5人以上雇用している会社は事業承継税制の対象になる可能性があります。冒頭の不動産賃貸会社等も検討の余地がありますが、例外要件は常時満たす必要があるので、免除されるまでの期間、人数が欠けないように注意が必要です。

 次回は、猶予期間中、満たし続けなければならない「事後要件」について解説したいと思います。