2021年12月10日、自民・公明両党は、2022年度税制改正大綱を決めました。
 通常、来年早々招集の通常国会で決議され、3月中に成立します。
 今回は、改正項目の中から、注目を集めていた個人関係の税金、及び岸田首相肝いりとされる賃上げ促進税制(法人& 個人事業者)、電子書類の電子保存の2年間猶予、検討事項などについて、解説します。

1. 住宅ローン控除(所得税・住民税)

個人所得税・住民税の話です。
 この制度はおなじみかと思いますが、住宅を購入する際、住宅ローンを借りると、借入金残高の一定率が所得税と住民税から控除できる(還付は不可)という制度です。
 制度趣旨としては、①住宅取得の促進、②住宅取得者のローン負担軽減があるわけですが、今回の改正では、①ローン金利が1%を割り込む(現状借入金利平均0.4%)逆ザヤの是正、②住宅性能に応じた上乗せ措置の導入、③控除期間を13年とすることでコロナの逆風に配慮した内容となっています。
 控除額の総額は、借入限度額が4000万円(消費税率引上げ時の反動対策)から3000万円に、控除率が1%から0.7%に引き下げられた影響は大きく、控除額総額は400万円(4000万円×1%×10年)から273万円(3000万円×0.7%×13年)に大きく縮小しました。そうは言っても、年収によっては従前制度をフルに利用できた人は多くないと言われるので、改正の影響はそこまで大きくないかもしれません。
 また、対象者が年所得3000万円以下から2000万円以下に引き下げられましたが、13年間のうち年所得が2000万超の年のみ適用できないという意味となります。
 本改正は、2022年以後居住した場合に適用されます。

項目改正前改正後
控除率年末借入金残高の1%を税額控除年末借入金残高の0.7%を税額控除
期間13年間(住宅需要低下を懸念し、2021年税制改正で10年を特例延長)13年間・・一般住宅は2024以降10年間
借入金の限度(一般)4000万円 (認定住宅)5000万円(一般)3000万円 (省エネ住宅)4000万円 (ゼロエネルギーハウス)4500万円 (認定住宅)5000万円 2024年まで入居、その後は減額
対象者所得3000万円以下の者所得2000万円以下の者

2.固定資産税(地方税)

 固定資産税は、市町村の税収の40%を占める基幹税と言われ、改正によって市町村の財政に大きな影響を与えることになります。
 固定資産税は、土地や建物の評価額を基礎とした課税標準額に税率を乗じて計算されますが、この評価は3年に1回見直しされます。今年2021年は評価替え年であったのですが、コロナの影響を踏まえ2020評価額を据え置き、税額も据え置かれました。(税影響1100億円)
 今回の改正では、①評価は通常通り見直しし、②商業地に限っては評価額の激変を負担調整によって1/2に緩和し、上昇率は最大2.5%とします。住宅地は緩和措置を講じないので最大5%の上昇率が適用されます。  

項目20212022
コロナ対応税額据え置き(商業地)負担調整1/2に緩和(2.5%) (住宅地)負担調整そのまま(5%)

3.住宅取得資金贈与の非課税(贈与税)

 個人が個人から住宅の取得をするための生前贈与を受ける際の話です。
 制度趣旨としては、住宅取得を促進するため、父母・祖父母からの生前贈与の一定額を非課税とするものです。
 本制度は租税特別措置です。適用期限である2021年12月31日を2年間延長しますが、非課税枠は縮小されます。受贈者年齢は、18歳以上に引き下げられました。
 本改正は、2022年1月以降の生前贈与に適用されます。

項目改正前改正後
非課税額(一般)1000万円 (省エネ住宅)1500万円(一般)500万円 (省エネ住宅)1000万円
受贈者年齢20歳以上18歳以上

4.賃上げ促進税制(法人税・所得税)

 従前制度の大幅バージョンアップで、名称のとおり、賃上げを促進する税制です。
 岸田総理肝いりの政策で、経済活性化のため、賃上げした企業に対する優遇税制の位置づけ税制ですが、どれだけ効果があるか、疑念の声もあります。 
 改正内容としては、大企業の場合、継続雇用者(当期・前期の全期間給与支給がある雇用者)給与が前期と比べて3%以上増加しているとき、増加額の15%が控除でき、上乗せとして、4%以上増加で10%加算、教育訓練費20%以上増で5%加算、最大30%控除になります。(法人税・所得税の20%が限度)
 中小企業の場合、計算を簡素にするため継続雇用者でなく、雇用者給与(途中入社含む)が前期と比べて1.5%以上増加しているとき、増加額の15%が控除でき、上乗せとして、2.5%以上増加で15%加算、教育訓練費10%以上増で10%加算、最大40%控除になります。
 また、資本金等が10億円以上の大企業は、継続雇用者の給与総額が1%以上増加していないときは、研究開発税制を使えなくするムチも創設されました。
 本改正は、2022年4月1日開始年度から適用されます。
 また、税制とは別に中小企業が賃上げしやすい支援として、ものづくり補助金や持続化補助金に特別枠を設ける方針とされます。

項目改正前改正後
適用条件(大企業)継続雇用者の給与総額3%以上増、&、国内設備投資が減価償却費の95%以上 (中小企業)雇用者の給与総額1.5%以上増(大企業)継続雇用者の給与総額3%以上増 (中小企業)雇用者全体の給与総額1.5%以上増
税額控除額(共通)雇用者全体の給与総額が前年度比で増加した額の15% (大企業)最大20% (中小企業)最大25%(共通)雇用者全体の給与総額が前年度比で増加した額の15% (大企業)4%以上で10%加算、教育訓練費20%以上増で5%加算 (中小企業)2.5%以上で15%加算、教育訓練費10%増で10%加算

※中小企業=資本金1億円以下で、大法人に支配されていない法人
 継続雇用者=当期・前期の全期間、給与支給がある雇用者
 比較は、前期が対象で、設立年度は対象外

5.電子書類の電子保存の2年間猶予(法人税・所得税)

 2022年1月以降、事業者が取得する電子書類(PDFやクラウドなど)は出力した紙保存が認められなくなるとされておりました。
 しかし、告知が十分できていないこと等を踏まえて、2年間の宥恕規定が設けられました。具体的には、税務署長がやむをえない事情があると認め、税務調査時に紙出力の提示に応じることができる場合とされます。また、税務署長への手続きを要せずに運用上配慮することも明記されました。

検討1.生前贈与加算(相続税・贈与税)

 死亡前3年以内に故人から相続人に対して生前贈与がおこなわれた場合、生前贈与額を相続人の相続財産に加算して相続税を計算する仕組みがあります。
 生前贈与が年110万円まで無税でできるため、連年贈与により時間をかけて、相続財産を無税又は低い税率で移転することができていましたが、課税の公平の観点から昨年度の税制改正において、検討事項とされておりました。
 今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税を一体的に捉えて課税する方向性が示されており、来年度改正の対象になるものと考えられます。

項目改正前改正後
加算対象相続開始前3年以内の生前贈与は、相続財産として加算 =3年を超えた分は対象外検討中

検討2. 金融所得課税(所得税・住民税)

 このテーマは、総所得1億円を境に所得税の負担率が下がるという1億円の壁で一躍有名になった感があります。岸田総理が自民党総裁選において、富の分配のしかたを見直し分厚い中間層をつくり格差を解消するという政策の中で、有価証券譲渡益に対する現状20%の税率を30%程度に引き上げるといった提案がありました。
 しかし、コロナ禍での株式市場への悪影響、来年参議院選挙を控えている等もあって、今回は見送りとなりました。

(注)本内容は、税制改正大綱を参考に私見を交えて速報しております。
実際の適用関係は、今後発表される改正法案・政令・省令を参照ください。