前回に引き続き確定申告に関連して、財産債務調書制度に関してご説明いたします。

令和4年度税制改正で、財産債務調書の提出義務者・提出期限などについて見直しが行われています。今年の提出となる令和5年分の財産債務調書から対象です。今回は改正点、財産債務調書を提出した場合のメリット、提出しない場合のデメリットに関して解説いたします。

財産債務調書の提出義務者

<改正前>

 財産債務調書の提出義務者は、所得税の確定申告書を提出する必要がある方で、以下の所得基準及び財産基準をいずれも満たす場合です。

 令和5年分以後は、改正前の提出義務者に加えて財産の合計額が10億円以上の場合は所得金額に関係なく財産債務調書の提出が必要となります。改正前の要件では、高額の資産を保有していたとしても、所得基準の2,000万円超を満たしていない場合は提出義務者に該当しませんでした。今回の改正では、納税者の資産の異動状況を適切に把握するため、財産債務調書の提出義務者の拡充が図られています。

★ 従来通り、所得税の確定申告書を提出する必要がある方で、以下の所得基準及び財産基準をいずれも満たす場合

★ 所得金額に関係なく財産の合計額が10億円以上の場合

【参考】相続により財産を取得した場合の所得基準の判定

 相続の開始の日の属する年(相続開始年)の年分の財産債務調書については、その相続又は遺贈により取得した財産又は債務を記載しないで提出することができます。この場合、相続開始年の年分の財産債務調書の提出義務については、財産の価額の合計額からその相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額を除外して判定します。

(参考)国税庁 財産債務調書制度(FAQ)Q1・Q39

財産債務調書の提出期限の後倒し

 令和5年分以後に提出する財産債務調書は、提出期限が後倒しされています。従来、財産債務調書の提出期限は、所得税の確定申告期限と同様に翌年の3月15日とされていました。しかし、提出期限までに保有財産の正確な把握が困難な場合もあり、令和5年分以後は提出期限が翌年の6月30日と変更されています。

従来の提出期限…その翌年の3月15日

令和5年分以後の提出期限…その翌年の6月30日(最初の提出期限は令和6年6月30日)

財産債務調書の記載事項の簡略化

 提出義務者の事務負担軽減の観点から記載事項を簡略化できる範囲が拡充されました。具体的には、家庭用動産や事業用の未収入金などについて、記載を簡略化できる範囲が従来の100万円未満から300万円未満に広がりました。また、新たに預貯金についても記載を一部省略できるようになり、青色申告決算書又は収支内訳書の「減価償却費の計算」欄に記載された減価償却資産については、総額で記載することができるようになりました。

(出所)国税庁 財産債務調書制度等の見直しについて zaisan_leaflet.pdf (nta.go.jp)

財産債務調書の提出がある場合の軽減措置と提出がない場合の加重措置(ペナルティ)

 それでは、財産債務調書の提出義務者が提出をしなかった場合、どうなるのでしょうか?何かペナルティが課されるのでしょうか?

 財産債務調書制度において、提出期限内に提出がなかったとしても、そのこと自体に何か罰則があるわけではありません。ただし、適正な提出を確保するため、インセンティブとしての過少申告加算税等(注)の軽減措置と、間接的なペナルティとしての過少申告加算税等の加重措置が設けられています。

〇財産債務調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置

 財産債務調書を提出期限内に提出した場合に、財産債務調書に記載がある財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、その財産または債務に係る過少申告加算税等が5パーセント軽減されます。

〇 財産債務調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置(ペナルティ)

 以下のいずれかに該当する場合、その財産または債務に関して所得税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除く)があった時は、その財産または債務に係る過少申告加算税等が5パーセント加重されます。

★ 提出期限内に財産債務調書の提出がない場合

★ 提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産または債務の記載がない場合

(重要なものの記載が不十分であると認められる場合を含む)

 加重措置は「所得税」の申告漏れがあった場合に限定され、死亡した方に係るもの(準確定申告)は対象から除かれています。一方、軽減措置は「所得税」だけでなく「相続税」の申告漏れがあった場合にも対象となります。

 これまでは、提出期限が所得税の確定申告期限と重なり、直接的な罰則もないことから財産債務調書の提出をしていなかった方もいるのではないでしょうか。今回の改正では、提出期限が6月30日と見直され、一部の記載事項は簡略化されています。提出期限までまだ時間がありますので、提出義務者の方は財産債務調書を提出することをお勧めします。