中小企業のM&Aが活況です。
といわれても、よその話のように感じる方はまだまだ多いと思います。
しかし、意外と身近にM&Aの機会は存在します。
なんだ、そういう使い方があるのなら知っとけばよかった、と後で後悔しないように、少しM&Aに触れてみましょう。
M&Aは、会社の事業又は株式を売却することにより営んでいる事業を承継してもらう手続きなので、売り方と買い方が存在します。

まずは、売りの場面

主に想定される場面は3つあります。

第1は、事業承継の場面です。

子供が事業を継いでくれないとか、そもそも継ぐ人がいないような状況では、M&Aによる外部承継が最適です。黒字(営業利益)の事業であれば間違いなく売れますが、赤字であってもその原因が明確で買い手目線で除去可能であれば売れる可能性は十分あります。
実際、そうとは知らずに廃業された方にM&Aの話をすると、誰も教えてくれなかったと残念がられます。
今、私が関与している案件も、相続によってご子息が承継したものの、経営経験がないので顧問税理士さんから廃業をすすめられたのですが、この経営状況なら売れそうだということでM&Aマーケットに載せる準備をしております。

第2は、事業再生の場面です。

事業再生でM&Aに適しているのは、債務超過(資産より負債が大きい状態)だけど、債務が大きくなった原因が明確で原因を除去できれば経営可能な状態です。例えば、新規事業に失敗したが既存事業は健全とか、借入金は大きいが失敗した不動産投資の残債など。このようなケースは、法的整理手続きである破産や民事再生手続き、あるいは私的整理手続きにより債権者に債務超過部分の債務を免除してもらい、同時に、新経営者となるスポンサーをM&Aにより探します。
最近関与した事例は、農業経営をしている法人ですが、新規事業で始めたレストラン事業に失敗し多額の借入金を抱えてしまったケースです。私的整理手続きを行い、銀行に債務超過部分の借入金を免除してもらい、同業他社に事業を承継してもらうことで、器としての会社は消滅しましたが、従業員の雇用と銀行以外の取引先の支払はカットせず取引の継続が図れました。(私的整理だと金融債権のみカットし、商事債権はカットしないことが可能です)

第3は、上記以外の会社売買です。

選択と集中の経営手法でコア以外の事業を営んでいる会社を売りに出したり、あるいは会社を創業して一定規模になったら売りに出すという起業家の会社売買もあります。そういう方は、役員報酬をゼロにして会社の利益と価値をかさ上げする方法をとります。これは理にかなっていて、役員報酬の場合、最大55%の所得税がかかりますが、役員報酬を取らない分価値が増した会社の株式を売却すれば所得税は20%で済むので、その分手取りが大きく増え、創業~成長~売却を繰り返すことで大儲けをした方もいるようです。

次に買いの場面

買いの場合は、場面よりも目的といった方が適切ですが、主に2つあります。

第1は、ゼロから操業するとかかる時間を節約したいという目的です。

事業を営むには通常会社(株式会社か合同会社)を用います。
会社を設立し、従業員を雇用、事務所や事業所探しと賃貸借契約、得意先・取引先の開拓など、事業内容や規模によっては、開業するまでに数年を要する場合もあります。
ところが、それらのインフラがすでに整っている会社をM&Aで買えば、買った日から売上があがります。その昔、ソフトバンクの孫さんが、海外で成功したビジネスモデルやサービスを日本でいち早く展開し“タイムマシーン経営”と呼ばれましたが、M&Aは正に時間を買うという目的に合致します。
特に、若い起業家の方は、会社を自分自身で設立するより、M&Aによって自身のニーズに合った会社を買うといった行動をとる場合が少なくないと感じます。

第2は、会社事業を補強するため、あるいは事業拡大の目的です。

流通の川上(メーカー)に属する会社が川下(小売)の会社を買って一気通貫のビジネスを展開する、あるいは、マンション分譲の会社がマンション管理を営む会社を買って売った後も安定収入を確保するなどが事業の補強でしょう。また、ますますスピーディに事業環境が変化するのが現代社会で、今営んでいる事業が明日どうなるかわからないという不安を抱える中、事業拡大戦略(多角化)によりまったく異なる事業領域の会社を買うケースがあります。

なお、M&Aで会社の株式を買った場合、株式の購入代金が損金(経費)になるという税制がありますが、2024年度税制改正によって損金算入割合がなんと最大100%になりました。
この機会に利用しない手はないと思いますが、この税制については回を改めて詳しく解説します。植木